関西では常識「緑のおはぎ」の不思議

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今日は、日経新聞に掲載されたおはぎの記事をシェアさせて頂きます。

お彼岸に大阪・梅田のデパ地下を歩いていたら、複数の和菓子店で緑色の「青のりおはぎ」を見つけて驚いた。あんこ、きなことセットで「三色おはぎ」とある。関東ではごまを使ったものが一般的で、青のりは見たことがない。青のりおはぎはどのようにして生まれたのか。

■「マリモみたい」

 色鮮やかな青のりがフワフワとまぶされたおはぎ。「マリモみたい」。思わずつぶやいた記者に「おいしいですよ。香りと風味が良くて」と女性店員が話しかけてきた。「関西ではよく売ってます。ごま? あまり食べへんねえ」

 青のりおはぎは関西特有の文化なのか。グループで北海道から鹿児島まで全国約200カ所に和菓子店を出店するサザエ食品(兵庫県西宮市)に問い合わせた。

サザエおはぎ分布図

 愛知以東ではあんこ、きなこ、ごまのおはぎが定番商品で、以西ではこれに青のりを加えている。青のりは約35年前、大丸心斎橋店に出店する時、百貨店の要望を受けて売り出し、需要のある地域に広げた。関西でよく売れるという。

 サザエ食品ではごまも扱うが、関西で調べたほかの和菓子店では、あんこ、きなこ以外に青のりはあっても、ごまはほとんど見かけなかった。

■お好み焼きには合うけど…

 お好み焼きやたこ焼きのイメージが強い青のりが、和菓子に合うかも疑問だ。

 全国加工海苔協同組合連合会(東京・千代田)に青のりについて尋ねると、驚きの事実がわかった。おはぎに使われている青のりは、お好み焼きにかけるものとは別物だというのだ。

 「お好み焼きに使うのは、大抵が雲母の破片のような形をした『アオサ』という海藻。正式には青のりと呼びません」と今井忠顧問。では青のりとは? 「いくつか種類がありますが、『スジアオノリ』という海藻が代表的。例えば割烹(かっぽう)でとろろ汁に入っているのはこれです」

スジアオノリは杉の葉のような形で、値段はアオサの10倍以上。四国が主な産地で、おはぎにも使われる。アオサは堅くて香りが薄いが、スジアオノリは柔らかく、お茶のような上品な香りがするという。それならおはぎにも合いそうだ。

■陰陽五行説が関係?

 続いて全国の食文化を研究する奥村彪生さんに三色おはぎの由来を尋ねた。文献に記述はないが、「中国の陰陽五行説に由来すると考えられる」とのこと。日本料理、とくに京料理は陰と陽、木・火・土・金・水が万物を構成すると考える陰陽五行説の影響を強く受ける。五行を色で示すと緑、赤、黄、白、黒となる。

 「江戸時代から彩りや香りを出すため、青のりやごまなどがよく使われるようになりました。あずき、白あん、きなこ、ごま、青のり。京都で五色おはぎが生まれて全国に広がり、口に合うものが残ったのでしょう」(奥村さん)

 産地の四国に近いこともあって関西では青のりを使うことが多く、京都には青のりを豆にまぶした茶菓子もある。「濃い味を好む関東では油気のあるごま、薄味を好む関西では上品な香りがする青のりが支持された」と奥村さんはみる。

 青のりおはぎ発祥の地とも目される京都に向かった。南座の隣に位置する祇園饅頭(まんじゅう)は文政2年(1819年)の創業。6代目店主の林純一郎さんは「はっきりわかりませんが、うちでは昭和になってから目を引くために売り始めたようです」と話す。「青のりはクセがあって大人の味。好きな方はよく買ってくださいます。それに彩りが美しいので、特にお彼岸に人気です」

 取材を終えて外に出るとうららかな春の陽気。青のりおはぎを川辺に座って食べてみた。鼻に抜ける青のりのいい香り。後味がさっぱりとしている。秋の彼岸には青のりおはぎも供えてみよう。関東の先祖も気に入るに違いない。

(大阪・文化担当 佐々木宇蘭)(2012/4/7)